大魔王の怒りと絶望、そして──やるせなさの結末へ…
キーフは激怒した。
必ず大いなる魔の王の怒りを知らしめねばならぬと決意した。
キーフには相手の血盟のことはよくわからぬ。
キーフは、大魔王軍の血盟主である。配下を率い、他国と交流して暮らしてきた。
それゆえ筋の立て方には人一倍に敏感であった。
大魔王軍は、害血盟と呼ばれるような所とも、正義をくだすような所とも、国交がある。つまり様々な方面性を理解し八方美人的な国交がある。
しかし正式な同盟には、以前より遊友団とそれを締結していた。
しかし鯖統合に備えて互いに衰退してきたことを機に合併の話を進めていた。あと一押しで合併も間近なのである。
キーフは、それゆえ、合併に反対する遊友団設立者の心をほぐす為の熱い戦いやらきっかけやらを作りに、金曜日遊友団所有の要塞に入札しようとしたのだ。
先ず、その事情を配下に説明し、それから入札に丁度いいタイミングをぐでぐで待った。
キーフには自信があった。この戦いを機に、彼は心を開くだろう。いまは血盟主をしりぞいているようだが、発言力を持つ彼が血盟の方向性に反発するならば、下手な事をすると派閥に別れて遊友団が崩壊しかねない。話を持ちかけた大魔王軍は、それを何とか阻止しつつ彼らを受け入れたかったので、納得させられるよう画策する。また創設者も、合併によって遊友団の無くなることへの心配とともに、この現状に満足していると誤魔化している。その彼に、これからささやきを送るつもりなのだ。盟主を降りて久しく笹しなかったから、話すのが楽しみである。
──さて、冗談はここまでにしよう。
要約すると、大魔王軍は同盟であった遊友団を吸収してパワーアップしたい。しかし、現血盟主は乗り気だが、創設者と1部血盟員は現状のままで楽しいと言っているようだった。彼らの意見を蔑ろにしてしまうと、近いうちに「じゃあ出てけ」「ああ出ていく」となるのは明白だったので、要塞戦を機に楽しい戦いへの参加……すなわち大魔王軍への参入を促そうと考えていたのだ。
ここまでは、よかった。
しかしどうやら遅かったのだろうか。
現血盟主だった者(ささやきが来た時は既に創設者へ盟主を返還していた)
から、いくつかのささやきが来た。
その内容は、分裂してほかの血盟に行くということだった。あまり望ましくない結果だが、未練は無くなるという点では仕方なくも決断のひとつだ。ここまで読んで、次に慰めと歓迎の言葉をささやこうと思った。が───
なんと、分裂した数人の行き先は、遊友団に所属していたサブキャラの本垢が存在する強豪血盟という話だったのだ。
流石にこれは驚いた。
俺の持ちかけた話で分裂してしまったのは仕方がなくも気の毒だが、そうまでして決断をしたのに、その血盟へ取られた形になったのだから。
謝罪は貰ったが、前々から話をしていた大魔王軍との相談も無しに事後報告である。
あちらが何を思ってそんな選択をしたかは知らんが、俺としては大魔王軍の強化と鯖統合への保険の希望とし、あらゆる可能性を考えつつ、断られることも覚悟はしていたが、なんとか話を成功させようと進めてきた我らからして、交渉失敗どころか他所へ行くことになっていようとは、筋違いにも程があり、到底納得できる内容ではないのは想像に難くなかろう。
大魔王とて所詮は人間、これを読んで怒りと絶望に頭が支配される。
あちらも結果として分裂し、そのせいか現血盟主からのささやきには大魔王軍への怨みが見受けられる。
色々話し合ったが、最終的な案は、明日の要塞戦にて、互いの怨みを清算させることとして決定した。遊友団との国交は終わってしまったのだ。
大魔王軍は怨みの戦争はしない。
要塞戦だって、こんな形で執りおこなって楽しいかはわからん。
相手の血盟主から分裂の恨み言を言われた際に「知ったことではない」と言った。
しかし、実は血盟が分裂する苦しみを大魔王軍の古参は知っているのだ。
かつて大魔王軍では、ガチ勢配下とまったり勢配下の軋轢があり、強豪数名が上位血盟に行ってしまうことがあった。方向性の最終的な違いによる分裂は仕方ないとはいえ、バッサリと切り替えるには時間も掛かった。二度と味わいたくない悔しさであった。
遊友団設立者が、大魔王軍への吸収を嫌がっている気持ちは痛いほどわかる。また、大魔王軍の誘いによって結果的に分裂してしまったことに対する恨み言だって同情しない訳では無い。それを1番懸念していたのだから。
……もはや誰が悪いとかでは無い。
筋違いだって、俺は彼らの考えを知らないのだから、彼らの言う話では謝罪で済ませた気だったのだろう。
価値観の違いを話し合ってもしようがない。ならば……PvPのゲームの本懐、筋道通ったルールの下、最後の決着で清算する。
………大魔王は、我儘なんだよ。
(この話は、事の顛末を大魔王軍血盟主視点から書き綴っている。遊友団内部のことを憶測で話しているが、すべてが正解では無いはずだ。俺は怒りとやるせなさのままにこれを書き綴るため、自分勝手な描写も多数ある。それを踏まえて、読んでくれるとありがたい。)