大魔王の戦歴

これは…リネレボのルウン鯖にて活躍する、とある大魔王の戦歴である。

とある遺跡の伝説

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活気に満ちた関門から北に向かうと、大きな柱に囲まれた遺跡がある。

遺跡を守るようにコウモリが飛び交い、そのコウモリを釣り餌に使う者や、はたまた焼いて喰らう者が、呑気に釣りをする湖。そのまわりには、行商人が安全に行き来できる交易路があり、滝の近くにはキャット商人パンの好物であるキャットニップが群生する。

 

……ドルメン遺跡。

読者諸君は、ここで ドワーフの考古学者からエルフの遺物を受け取り、弱まった結界を直しに異空間へ旅立った。ストーリーを注視している者ならば、記憶に残る場所だろう。

しかし、諸君は知らないはずだ。

穏やかさと波乱の予感が共存するドルメンの地に、隠されし伝説が存在することを………

《注意》

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世界観

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 破壊神グランカインは、かつて愚かな創造をした。

水、火、大地、風、すべての……しかしクズのような精神を吹き込まれた創造物は人間と呼ばれ、なんの役にもたたなかったので、巨人の奴隷のような暮らしをしていた。

 

 

ある時、その人間の怨念から邪悪な存在が現れた。

グランカインの闇のチカラを色濃く引き継いだその者は、よどんで腐った水を示すかのようにずるがしこく、しかし消えかけの火のごとく臆病で、不毛の汚れた大地のように貪欲であり、激しく荒い風のように暴虐を尽くした。

その邪悪な存在のチカラは、地上のどんなものよりも強かった。

人間族はもちろん、オーク族やエルフ族、ドワーフ族もアルテイア族も、そして巨人でさえも恐れた。恐怖はいつしか畏怖へと変わり、彼を崇めて災禍から逃れようとする者が後を絶たない。それは彼の軍勢となった。

 

強大すぎるチカラを持ち、溢れんばかりの魔力をあやつり、ほかの種族を率いる王のような姿から「大魔王」と呼ばれ、ありとあらゆる生き物を恐怖と畏怖の渦に叩き込んだのである。

 

 その頃になって、ようやく神々はこの邪悪な存在……大魔王を、どうにかしようと考えた。

 

 

 

 

ファアグリオは、業火によって大魔王を焼き尽くそうと考えた。しかし大魔王は己の臆病な火の精神を、この燃え盛る火の精神とすげ替えたので、ファアグリオは何もできなくなってしまった。

 

シーレンは、洪水で大魔王を沈めようとした。そこで大魔王は、さきほど手に入れた燃え盛る火のチカラによって水を元素までバラバラにし、それらを呑み込んで喉を潤した。

 

マーブルは大地の奥底に閉じ込めようと地割れを起こした。地中深くまで落ち込んだ大魔王は、そこから大地のエネルギーを吸い取って、その大陸の大地の元素を平らげてしまった。しばらくして枯れた大地から、ボコっと満足そうな大魔王が這い出てきた。

 

サイハは暴風にて、大魔王を何処か知らない所まで吹き飛ばそうとした。大魔王はそのように飛んでいったが、そのとき、口いっぱいに風の元素を頬張りながら飛んでいったので、暴風の扱いにさらに長けてしまい、飛んでいった時以上の速さで元の地に戻ってきた。

 

 大魔王の排除に失敗した四大元素の神々は、ついに父母へとすがった。

「あの者は、破壊ですら我がものにするだろう。この私が手を出すとどうなるか分からない。」

グランカインはそう嘆いた。

「破壊の神ですら何もできないのに、創造の神が何をできるのでしょうか。なぜあのような者が創造されてしまったのだろう……」

アインハザードは、かつての愚かな創造へと思いを馳せた。

 

その時、グランカインはこう思い付いた。

「そうだ。大魔王に対抗できる存在を創造してはどうだろうか。」

その思い付きは、即座に実行された。

アインハザードは、己の精神から光の器を紡ぎ、そこには燃え盛る火の精神、安らかな水の精神、強固なる大地の精神、軽やかな風の精神、これらすべてを吹き込んで創造物を完成させた。

 

この者は、神々の期待を裏切らなかった。

勇猛果敢に大魔王へと立向かうその者は、勇者と呼ばれて崇められた。

 

大魔王が火を出せば、勇者は水でこれを打ち消す。

勇者が大地の岩を投げつければ、大魔王は荒れ狂う暴風にてこれを穿つ。

互いに元素を吸収するようなことはなく、好敵手を得たことによって大魔王は喜び戦い続け、勇者は己の使命に忠実に戦い続けた。

 

彼らの戦いのさなか、グランカインはシーレンと事件を起こした。

大魔王は軍勢を率いてシーレンと手を組み、勇者は神々と協力してこれを迎え撃った。

シーレンが死の世界に入った後も、大魔王と勇者の戦いは続いた。世界が水による混乱に陥った時は、協力して大地のチカラを行使し、陸を造りあげてその上で戦い続けた。まるでそれだけが存在する理由であるかのように。

 

もはや彼らの戦いは、もはや彼らだけのものとなり、彼らの信奉者を除いては知る者がほとんど居なくなった。

 

ーーそしてその時は訪れる。

 

 

詩と歌の神であったエヴァが、水を司るようになってしばらくした時である。

「彼らはすべての精神を持っている。しかし、足りないモノがあるのではないか。……そうだ、私の詩歌を教えてみましょう。」

水を支配し、完全とはいかないまでも水の災害を治めたエヴァは、自信を持って、しかし母の怒りに触れぬようにこっそりと、小さな滝から流れ込む泉を介して詩歌を教えに行った。

 

大魔王と勇者が、戦いの疲れにより休んでいる時、エヴァは詩や歌を聴かせた。その時、彼らの心に変異が起きる。

 

大魔王は、いままでの己の行いを深く恥じ、勇者は戦い続ける己の使命に疑問を抱いた。勇者は姿を消し、大魔王は己の信奉者たちに命じて封印の術式を組み立てさせ、生まれて初めて詩歌を聴いた、その思い出の地に自らが封印された。彼は、自分たちの生きた証拠が詩歌となって後世に遺ることを信じて、ほかの種族に迷惑をかけぬように姿を消そうと考えた。

 

時は経ち、大魔王とは別の邪悪を退けるため、強力な魔力を含む地を……ドルメンと呼ばれたその地の魔力を利用して、強固な結界が張られた。封印の下で眠る大魔王は、その魔力を吸い取られ、意識のないうちに弱っていった。

大魔王の願いは叶わず、すべては忘れ去られてしまったのだ。

 

 

ある時、見慣れぬ旅人がドルメン遺跡を訪れた。彼女はドルメンの魔力を使わぬように結界を書き換え、別の機械を動力として再起動し、自分は結界守護者となった。それを止めようとする島の人々に「古い友人を守らないと」と言ったようである。

 

さらに時は流れた。

闇の結社が結界を弱らせたその時、大魔王の眠りも解けた。

よみがえった大魔王は、かつての信奉者の子孫に助けられ、すべてを知らされた。

詩歌に謳われぬ伝説、自身のチカラの喪失、そして好敵手の犠牲。

 

彼は、嘆き悲しんだ。

 

 

そして、彼は決意する。

この時代で再び軍を結成し、新たな伝説を創造する。今度は英雄として。

………なるべく迷惑をかけぬように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……青年はここまで話すと、そのガイコツの被り物をカラカラと鳴らしながら苦笑した。

「まあ、なんだ。この俺の話したことが、神官たちの話すことよりも真実に近いなんて証拠はどこにもない。しかし、君たちは理解できるはずだ。」

青年はこう言うと、仲間たちに呼びかける。

「さあ、明日は我らが初めて挑む要塞戦だ!何がなんでも、ここを俺の要塞にする。みんな、手伝ってくれるよな?」

晩餐の途中、青年が話し始めてからは水を打ったような静けさとなっていた仲間たちは、火がついたように歓声や怒号などを含めた意気込みを次々に口にした。

青年はそれを聞くと、安心したようにガイコツの後ろに手を回して、遠方に見える大きな柱に囲まれた遺跡を見据える。すでに夜は明け方へと差し掛かっていた。

「光ある限り闇もまたある。しかし闇から光は生まれない。」

青年は、太陽が昇ろうとする方向へと目を向けて、それから夜の奥へと目を走らせる。

 

 

「なあ……闇の存在でも、お前に光を差し込ませることはできるかな。」